理念・政策・メッセージ
2026.06.21
「熊との共存をどう実現するか」
〜錯誤捕獲と長野県方針転換が突きつける課題〜
全国で熊の人里出没が相次ぎ、不安が広がっています。環境省は「緊急銃猟」制度を導入し、安全確保を最優先に対応していますが、これはあくまで対症療法にすぎません。本来必要なのは、熊と人間の住み分けを軸にした総合的な対策です。
(錯誤捕獲の増加と“安易な捕殺”への懸念)
近年、シカやイノシシ用の罠に熊が誤ってかかる「錯誤捕獲」が増えています。本来、許可のない熊の捕獲は違法であり、放獣が原則です。しかし現場では、放獣の難しさや責任問題から、その場で殺処分されるケースが増加しています。
調査では、錯誤捕獲される熊の95%が里に降りた経験のない個体とも言われ、むしろ「人慣れしていない熊」が多いのが実態です。
(長野県の方針転換がもたらす衝撃)
長野県はこれまで、錯誤捕獲時の熊の扱いに県が関与し、安易な捕殺を避ける運用を続けてきました。しかし最近、判断を市町村に委ねる方針へ転換。これにより、一部自治体では「錯誤捕獲はすべて補殺」という運用に変わったとの情報もあります。
市町村には野生動物管理の専門職が少なく、判断が「安全側=殺処分」に傾きやすい構造があります。長年積み上げてきた長野県の知見が失われることへの危機感から、関係者による緊急会議が開かれました。
(制度の問題点とリスク)
議論で整理された主な論点は次の通りです。
錯誤捕獲は違法であり、放獣が原則
現場には麻酔・行動評価などの専門技術が不足
放獣後の事故を恐れ、行政は責任回避的に捕殺を選びやすい
住民感情が判断を左右し、科学的管理が後退する危険
長野県が判断から退くと、自治体間で対応がバラバラになる
県が誇る「学習放獣」など高度な技術が失われる可能性
総じて、今回の方針転換は現場への負担転嫁であり、捕殺増加につながるリスクが高いという評価が示されました。
(SNSで見えた“恐怖”の力)
この議論をSNSで紹介したところ、「危険な熊は駆除すべき」、「専門性を持ち出し市町村を軽視している」といった批判が多数寄せられました。世論の多くが“恐怖”を基点に判断していることを痛感しました。
恐怖は生存本能として重要ですが、過剰になると冷静な判断を失わせます。戦争ですら恐怖の連鎖から起こることがあります。熊問題も同じで、恐怖心を乗り越え、科学的で冷静な議論が不可欠です。
(長野県から「共存モデル」をつくる)
日本は先進国の中でも珍しく、野生の熊が人間の生活圏に隣接して生息しています。特に長野県はツキノワグマの生息数が全国最多で、北アルプス山麓はその中心地です。
だからこそ、私は地元自治体や猟友会、県、環境省に対し、「人と熊の住み分けのベストプラクティスを長野県でモデル化しよう」 と提案しています。米国イエローストーンなどには優れた実践例もあります。
近視眼的な「危険だから殺す」ではなく、長期的視点での共存モデルづくりが求められています。
