自由民主党

衆議院議員 むたい俊介オフィシャルサイト 長野2区 自民党
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理念・政策・メッセージ

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2008.10.01

「ご近所から日本の国を変えよう」

〜コミュニティの問題解決能力〜


 2002年から続くNHKの番組に、「ご近所の底力」という番組がある。


 悩みや問題を抱えている町内会・自治会の代表20人がスタジオに登場し、以前同じような問題を抱えていた町内会・自治会の解決法を参考に問題を解決していくという番組だ。


 「住宅街の防犯」や「ゴミの分別」、「落書き」など町内会で取り組みうる課題を解決してきたが、番組のテーマは少しづつ間口を広げつつある。


 この番組には、多様で独創的な「地域力」発揮のノウハウが蓄積されており、コミュニティの活力を回復させる上の何らかのヒントがあるはずだ、という観点から、私は実際にNHKに出掛け、番組のチーフプロデューサーの佐藤高彰さんのお話を伺ったことがあった。


 佐藤さんは、元々「クローズアップ現代」を手がけられておられたそうだが、当初、「底力」をはじめた頃は、地域の問題がこんなに注目されるようになるとは想像していなかったとのことであった。国内外で喝さいを受けるような題材を取りあげた「クローズアップ現代」と、身近なコミュニティの草の根的な細々とした問題解決を取りあげた「ご近所の底力」では、自ずから人々の関心の度合いが異なると考えたこともあったようだ。


 しかし、意外や意外、ロングラン番組となっている。各地の事例を取材してみての「成功の共通の素」は、と伺うと、

・うまく行っているところは若者の参加を得られているところ

・若い人を巻き込むノウハウがあるところ

・金銭的負担が大きいところは入り口でダメ。1,000円を超える自己負担は失敗

・参加が容易なものが成功している

・議論をし始めるとだめになる

・とっかかりは、少人数の熱心な人がとにかく突っ走る。すると周りがついてくる

・成功した事例は、放っておいても、ネットで繋がり、次第に広がってゆく

といった要素を語ってくれた。


 よく、これだけ事例を集めるNHKの取材力はさすがですね、と聞かれることが多いのだそうだ、実は、活発なグループは、自ら発信をしていて、ネットで事例を集めていくと十分な材料が自然に集まってくる、とのことであった。


 番組を作成していく中で、若い人たちと接触する中で、一般に認識されているのとは異なる若者の実像に接する機会もあったそうだ。


 例えば、ある地域で、コンビニやコミセンの前でたむろする若者に、「何故ここでたむろするのか、新宿とか繁華街に行かないのか」、と質問すると、若者達は、「俺達は、地元のまちが好きだからここでたむろする。他のところでなんかたむろしたくない」と返事が返ってきたのだそうだ。若者は、好きな地域なのに行き場がないから、特定のところでたむろしている、ということが分かったのだ。


 堺市では、たむろする若者にアンケートを採ったところ、7割の若者が地域活動に参加してもよいとの結果がでたのだそうだ。それを受けて、堺市は若者を地域活動に積極的に参加させる方策を取り入れることにしたのだそうだ。


 杉並区では、防犯のパトロールにまちのおじいちゃんと子供をペアーにしたところ、子供が普段接しない年輩者との交流が新鮮で、好評だったという話も伺った。


 年間100件近くあった空き巣をゼロにした杉並区馬橋(まばし)地区の例も印象に残った。問題解決の方法を探していた馬橋地区の住民は、NHKの番組に相談を持ちかけ、NHKは世田谷区松原地区の成功例を問題解決のヒントにして住民が立ち上がったというものだ。


 「パトロールは度派手に」、というのがキーワードだったそうだ。空き巣狙いは通常下見をするのだそうだ。空き巣は、このまちは警戒していると感じると、警戒度の低いところに流れるようだ。そこで目立つジャンパーを着て、鈴を鳴らし、大勢で警戒活動をすると、空き巣狙いはこのまちでは商売は出来ないと諦めて去るのだそうだ。


 この話を聞いて思い出したのは、数年前に聞いた、ジュリアーニ元ニューヨーク市長の「破れ窓理論」である。まちに割れた窓があると、泥棒は街のすさみ具合を感じ、治安が更に悪化する。こまめに破れ窓を修繕していくことで結果的に治安が回復するという理論だが、思想としては同じだ。


 この防犯事例が放映され、この理論を元に活動する防犯ボランティアが全国に波及し、少し前の数字で8,000グループにもなっているのだそうだ。東京都では、番組に触発され、防犯ボランティアの育成を目指す「防犯アカデミー」を開設するに至っている。


 平均視聴率が10%を超え、関東地区だけで400万人が見ている計算になるのだそうだ。それだけ地域活動に潜在的な関心のある人は多いということになる。


 アンケートによると、地域活動に興味のある人は6割を数えるそうだ。しかし実際にやっている人は2割に満たない。この壁をどの様にして崩すか。それが課題ということになる。


 佐藤チーフプロデューサーは、団塊の世代が大量に退職する2007年以降がチャンスだと認識していた。会社人間だった人を地域にデビューさせる方法があるという。


 福岡県古賀市では、会社で幹部だった人に子供と遊ばせるという方法を採っているのだそうだ。子供は、肩書きなどに興味はない。その場の雰囲気を感じる子供と仲良く遊べるか、が地域社会にデビュー出来るかの試金石なのだそうだ。講釈ばかり垂れて何もしない人は地域社会で嫌われる。長年、組織内での蓄積を衒い無く地域社会に還元できると、地域社会は確実に変わる、というのが佐藤さんの期待であった。


 この番組収録はNHKの101スタジオで行われている。NHKで一番広いスタジオである。番組制作者の中では、「101の魔法」という言葉があるのだそうだ。番組開始前には自信なさげに入ってきたご近所の面々が、2時間の収録を終えるとやる気がみなぎって家に戻っていくのだそうだ。


 佐藤さんによると、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」といった番組はどちらかというと問題提起型。ところが、「ご近所」は問題解決型。今や人々は問題解決型の番組を好むようになっているという実感があるのだそうだ。問題提起型番組で、解説者が、少しでも解決方策に結びつくような発言があると、その後には電話がじゃんじゃんかかってきていたのだそうだ。そういうことがあり、もしやと思ってこの「ご近所」を手がけたところ、スター・タレントの出演がないのに、高視聴率を続けている。最初は信じられなかったそうだ。


 また、番組成功の裏には、インターネットの隆盛があると正直に言っておられた。積極的な取り組みを行っているグループは、概ねインターネット上で発信をしている。これにより、取材や材料集めが容易になり、番組をロングランさせることが出来ているとのことであった。


 番組で好評なのは、普段の生活に関わる課題で、防犯、災害、悪徳商法対策、動物もの(カラス撃退、鳩対策など)、生き方(グループリビングなど)といったものなのだそうだ。身近な話題に人々の関心が向いていくというのは、成熟化した社会の現象なのかも知れない。人口減少社会、少子高齢化社会の更なる進展で、こうしたご近所ものは、ますます深い関心を集めていくことが想定される。


 問題は、この事例を全国のご近所の成功事例として共有財産とすることだが、著作権上の処理が煩雑で、なかなかNHKアーカイブの方にも送れないでいるのだそうだ。データベース化も不十分。ダイレクトに悩みを抱えている地域と解決策のある人たちを結びつける方法が無いものかと悩んでいるのだそうだ。


 最後に佐藤さんの一言。「日本も案外捨てたものではない!」というのが、熱い番組作成に携わってきた感想だそうだ。「ご近所から日本の国を変えよう」と今では大きな声で言えるようになったとのことだ。この言葉は、これからのコミュニティ振興策に向けての大きなヒントともなり得る言葉であった。 


 私は、公共放送の力も借りることにより、今後のコミュニティ再生の取り組みも力を得ることを確信した。


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