「政策のリコールと政治家のリコール」

 トヨタがプリウスなどのトヨタ車のリコールを大規模に行っている。米国や中国で社長自らが対応措置を説明し、信用回復のために必死の努力を行っている。車の機能について重大な疑念が生じたことについて信用を重視する立場に立った世界企業の対応振りを見るにつけ、その真摯な姿勢にある種の感動を覚える。

 その一方、普天間基地移設問題に関し、民主党政権は名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ陸上部にヘリコプター着陸帯を造る代替案を検討している旨報道されている。既に米側へ打診、流石に沖縄県関係者は頭ごなしの対応に反発を強めている。

 民主党は野党時代に普天間の「県外・国外」移転を明確に主張していた。政権交代が確実視された選挙中の時点において、鳩山由紀夫党首は敢えて、「普天間基地を最低でも県外へ移転する」と沖縄県民に明確に約束し、その約束を信じた沖縄県民は県内の全選挙区で自民党候補を落選させる選択を行った。

 にも拘らず事も無げに重大な約束違背が行われつつある。政治から信用が失われると国民の政治不信は高まる。政権選択が大きな争点になった選挙において、結果的に政権を奪取した政党による虚偽に基づき有権者の投票が行われたとすると選挙自体の正統性が問われることになる。

 選挙民の判断に決定的な影響を及ぼした約束違背が行われることになった場合には、トヨタが車をリコールしたように、政治家は自らをリコールしなければならないことは当然である。少なくとも、沖縄県選出の与党衆議院議員は、普天間基地の県外移設が実現しない場合には、自ら辞任してその責めを負わなければならない。

 約束違背は普天間基地の問題だけではない。民主党は、平成25年度までに16.8兆円の無駄を排除し、同年度までに民主党マニフェストの実施のための所要経費16.8兆円を賄うと約束していた。その中にはガソリン税などの暫定税率の廃止、高速道路の原則無料化なども含まれていた。

 当初、このマニフェストを見て、当時の与党の自民党は実現が不可能であることを指摘した。しかし民主党は反論し、国民にその実現を約束した。結果は、平成22年度からの実施を約束した暫定税率の引き下げは歳入不足を理由に撤回した。次年度以降に実施予定のマニフェストの内容も財源確保の目途は全く立っていない。

 無駄排除の手法として鳴り物入りで導入された「公開事業仕分け」で明らかになったのは、皮肉にも民主党が言明していた桁外れの無駄の存在は白昼夢であったということだった。

 民主党は、自らのマニフェストの検証を行うとしている。当然であろう。しかしその検証の後に不可欠なものがある。それは検証後のマニフェストにより、早急に再度総選挙を行うべきであるということだ。国政選挙という民主主義の意思決定と直結する重要政策のリコールは、当然に国会議員のリコールを伴うべきである。それこそが民主主義の信用を保つ唯一の手法である。


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