「衆議院小選挙区の区割りのあり方」

〜地域の発展を阻害する区割りの見直しが必要〜

 私が支部長を務める長野県第二選挙区は非常に広い選挙区である。鳥取県と同じ広さがあり、この選挙区よりも狭い都府県が7つある。この広い選挙区を巡る中で区割りに関する有権者の皆さまの苦情を聞くことが多い。選挙区の北の皆さま、すなわち旧上水内郡に属する皆さまからは、「何故我々が生活圏をともにする長野市と同じ第一選挙区ではないのか」、更には、「合併して長野市に属することになった後も何故衆議院の選挙区としては第二選挙区のままであるのか」、また選挙区の南の皆さま、すなわち松本市や東筑摩郡の皆さまからは、「松本市と連たんし生活圏が同じ塩尻市が何故諏訪地方と同じ選挙区であり松本と同じ選挙区ではないのか」、という戸惑いの声である。

 この疑問は、中選挙区制度を改め小選挙区制度を導入した際の決定に起因する。

 選挙区割りは国民の一票の格差に関係し、政治家の当落を左右する重要な問題である。衆議院小選挙区については国政調査の結果をもとに10年ごとに衆議院議員選挙区画定審議会が審議し内閣総理大臣に勧告し、総理大臣は問題がなければそれを採用して国会に提出する。

 区割りは「一票の格差を2倍未満にする」、「市町村を分割しない(大都市を除く)」、「飛び地をつくらない」などの方針のもとで地勢や交通を考慮して決定されることになっている。長野県では中選挙区制度のもとで4つあった選挙区が小選挙区制度のもとで5つの選挙区に分けられ、その際、以上の方針のもとで区割りが行われた。

 長野県が4つの中選挙区選挙区に分かれていた時代、いわゆる中信と呼ばれる部分が長野4区として現在の2区に相当する地域の大部分を占めていた。小選挙区制への移行に当たり、県内4つの選挙区を5つに再編成することとなり、塩尻市と木曽郡が離れて別選挙区となる一方で、北信地域の旧長野一区から、現在は市町村合併で長野市となった町村も含めて、上水内郡の全町村と更級郡の旧大岡村が含まれることとなり、新しく長野2区という小選挙区が生まれて現在に至っている。その結果、現在の長野2区は、松本市、安曇野市、大町市、長野市(旧更級郡大岡村、上水内郡豊野町・戸隠村・鬼無里村域)、東筑摩郡、北安曇郡、上水内郡の区域ということになる。

 この場合重要なことは、市町村合併による境界の変更があっても選挙区割りが自動的に変更されることは無い、という点である。この点について多くの有権者の皆さまが誤解している。私も長野市内の第2選挙区を廻る際に、「この地域は長野市になってもなお松本や安曇と同じ第2選挙区です。」と何度も説明する必要があった。平成の大合併の進展により2003年から2006年にかけて各地で大規模な市町村合併が行われたが、区割りは唯一の例外(この例外は2005年2月に長野県からから岐阜県中津川市に編入された旧山口村の区域)を除き、2002年に改正された当時のままである。そのために合併が行われても衆議院の選挙区としては従前のままということになっている。

 私は、衆議院の選挙区の有り様が地域の一体性や地域発展のあり方に支障を生じてはならないと思う。憲法の要請である一票の格差是正という理屈は重要ではあるが、素朴な有権者の感情をもっと重視しなくてはならない。国会が地元事情を無視し機械的に区割りを行っているのではないか、との疑念により、有権者の政治離れが生じ民主主義への無関心が昂じることを何としても避けなければならない。


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