2026年の夏から秋にかけて、長野県内の防災訓練に参加する機会がありました。
私が近年強く感じているのは、私自身も現地で活動した2024年能登半島地震や、2026年の熊本地震対応の事例を見るにつけ、被災直後における「電源の確保」と「水の確保」が住民生活の維持に極めて重要であるということです。特に断水が長期化した地域では、飲料水だけでなく、手洗い、入浴、洗濯など生活用水の確保が大きな課題となりました。
そのような問題意識から、8月30日の生坂村防災訓練、10月24日の松本市総合防災訓練、10月25日の長野県総合防災訓練(大町市)に参加し、主として「電源確保」と「浄水確保」の観点から展示内容を視察しました。
(防災訓練で確認した災害対応水システム)
私が参加した防災訓練では、いずれもシバウラ防災製作所の自然水利活用型浄水システムが展示されていました。
生坂村では防火水槽の水を、松本市では松本城の堀の水を原水として活用し、その場で浄水された水を確認することができました。また、生坂村では藤澤村長、松本市では臥雲市長が試飲する様子も拝見しました。
さらに長野県総合防災訓練では、
・シバウラ防災製作所の自然水利活用型浄水システム
・水ingの非常用膜ろ過装置
・水ingの可搬式浄水装置(「動く浄水場」)
・WOTAの水循環システム
が展示されていました。
これらはいずれも、近年の災害において断水時の生活用水や衛生環境の確保に活用されている技術であり、水道機能が復旧するまでの間に重要な役割を果たしていることが報告されています。
(災害対応を支える3つのシステム)
1.シバウラ防災製作所
「地域に存在する水を活用する」
生坂村では防火水槽、松本市では松本城の堀という既存の水源から取水し、その場で浄水を行う実演が行われていました。
このシステムの特徴は、河川、防火水槽、池、用水路、学校プールなど、地域に存在する水を災害時の資源として活用することにあります。
消防ポンプによる送水と浄水技術を組み合わせることで、一定の習熟訓練を経た地域コミュニティが運用主体となり、生活用水の確保に加え、適切な運用の下で飲用に供する水の確保も可能となります。また、比較的シンプルな構成で導入できることも特徴の一つです。
2.水ing
「大量の安全な水を供給する」
水ingの非常用浄水システムは、いわば「動く浄水場」と表現できるものです。
主な特徴は、高濁度水への対応、膜ろ過による安定した浄水、自動運転への対応、被災地への迅速な展開にあります。
大量の生活用水や浄水を供給できるため、自治体単位や大規模避難所への給水支援に適したシステムと考えられます。
3.WOTA
「一度確保した水をできるだけ有効活用する」
WOTAの主力システムであるWOTA BOXは、使用した水をその場で再生・循環する水循環型のシャワーシステムです。
公表資料によれば、使用した水の大部分を再生利用しながらシャワー環境を維持できることが特徴であり、限られた水資源の中で衛生環境の確保に貢献しています。
(三つのシステムは競合ではなく補完関係にある)
防災訓練を実際に見学して感じたのは、シバウラ防災製作所、水ing、WOTAのシステムは競合関係ではなく、それぞれ異なる役割を担っているということです。
<システム> <主な役割>
シバウラ防災製作所 地域水源の活用
水ing 大量浄水・大量供給
WOTA 水の循環利用・節水
避難所の規模や立地条件、水源の有無は地域ごとに異なります。
そのため、
�@ シバウラ防災製作所による地域水源の活用
�A 水ingによる大量浄水・給水
�B WOTAによるシャワー・手洗い水の循環利用
�C 蓄電池や太陽光発電による自立電源の確保
という組み合わせは、大規模災害発災直後の対応モデルとして有効な可能性を持っていると感じました。
今回参加した三つの防災訓練では、「地域水源活用型」「移動浄水場型」「水循環型」という異なるアプローチを比較して見ることができ、大変貴重な経験となりました。
(熊本地震に見る広域相互支援の実例)
こうしたシステムは、単に全国へ配備するだけでは十分ではありません。発災時には、それらを迅速に被災地へ集約する仕組みも求められます。
その実例が、2026年熊本地震におけるWOTAとJWAD(Japan Water Association for Disaster)の取り組みです。
WOTAの公表資料によれば、
・熊本県から正式な支援要請
・JWADによる全国自治体保有機材の調整
・各自治体から熊本への輸送
・熊本市内の集約拠点への集積
・避難所や医療・福祉施設への再配置
という流れで支援が行われました。
その結果、2026年8月17日時点で、全国44自治体、2団体から合計140台の機材が熊本県へ集約されたと公表されています。
さらに、当初は陸送中心であった輸送体制に加え、政府のプッシュ型支援や自衛隊による輸送支援も実施されました。熊本市内の集約拠点には全国から機材が集積され、被災地での生活用水支援体制が強化されました。
(能登半島地震の教訓から生まれたJWAD)
この取り組みの背景には、能登半島地震の経験があります。
能登半島地震では、WOTA BOX約100台、WOSH約200台を含む約300台規模の機材が展開されましたが、機材の集約と被災地への配備には相応の時間を要しました。
こうした経験を踏まえ、平時から自治体間で生活用水支援機材を融通する仕組みとしてJWADが整備されました。熊本地震での対応は、この広域相互支援の仕組みが実際に機能した事例として注目されています。
私自身、能登半島地震の際には、WOTAの前田社長や石川県の馳知事との意見交換の機会を得ました。その際、断水下における生活用水確保の重要性を改めて認識したことを、今でも鮮明に覚えています。
(分散配備と迅速集約システムの構築)
熊本地震の事例から見えてくるのは、浄水システムや循環型水利用システムといった設備の性能だけではありません。
むしろ、平時からの備蓄と分散配備、広域的な相互融通、行政機関との連携、輸送体制の確保といった運用の仕組みそのものが、災害対応力を左右する重要な要素であることが分かります。
今後は、水の確保だけでなく、電源、居住環境、衛生環境を含めた総合的な災害対応インフラを整備するとともに、それらの設備を平時から全国に分散配備し、発災時には迅速に集約・運用できる広域相互支援体制を構築することが重要であると考えています。
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