「書店という「都市的機能」の付加による集客の増加」

〜その背後にある人間関係〜

 私は毎日松本駅で「定点街頭演説」を行っているが、年末から最近にかけて、昼と夕方の松本駅の乗降客が例年に比較し増えているように感じていたところ、駅前商店街の新年会で、篠原俊明松本駅長から、NHKの連続テレビ小説「おひさま」が終了しても、松本駅の乗降客の対前年の増加傾向に変化はないとのコメントを伺った。

 実は、松本駅前の老舗のデパートのテナントが撤退し、駅前が非常に寂しくなっていたところへ、2011年12月に全国展開の書店「丸善」とイトウヨーカドウ系の新しいスーパーが新規開店し、駅前がにぎやかになった事実があった。

 篠原松本駅長さんの話だと、「おひさま」効果で沸いた安曇野方面の大糸線の乗降客が12月に入って落ちたことに対し、松本駅のそれは好調を維持しているということである。

 私も、諏訪や岡谷の知人を駅前で見かけることが頻繁になった。松本市内の知人は、「知り合いの医者は、毎日のように丸善に本を見に通っている」と観察している。駅前で喫茶店を営む御主人は、「本屋のついでに寄ってくれる客が確実に増えている」との感想を披歴していた。

 地方の駅前の衰退がやむを得ないものとして語られていたこの数十年、誰もがこれは地方都市の抱える運命なのだと諦めていたかのように思われたが、品ぞろえの良い書店の開店といったちょっとした端緒で都市の再生が可能となる動態的事象を目の前で見ることになった。

 聞くところによると、この書店の誘致は、ビル所有者に対する融資元の斡旋によるとの話を伺った。そして、新しいスーパーは、地元松本に縁のある親会社の社長の肝入により出店が可能となったとの話である。

 様々なネットワークの組み合わせが都市の再生につながるプロジェクトを可能とする。我々はこうした人間関係という「ソシアル・キャピタル」の意味を再認識しなければならない。地域再生は当事者意識のある「人次第」なのである。


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