むたい俊介
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長野2区 自民党

【メッセージ】
「元首相の自民党再生論に思う」

 自民党が総選挙で大敗し、一か月が経過しようとしている。政権を奪取した民主党の動きが華々しく各紙の紙面を飾る一方で、最近になり、自民党の再生に関する処方箋に関し、自民党関係者の見識が新聞に掲示され始めている。その中に中曽根康弘元総理の発言もあった。1918年(大正7年)生まれで91歳の元首相は、「そんなに年寄りは口を出さないほうがいい。若手や中堅に競わせるところに、政党政治の妙味がある、生命力がある。」との指摘をされている。

 5年ほど前に、この中曽根元首相の「自省録」という本を読んだことがある。自民党に長年籍を置きながらも、当時の小泉総理の引退勧告を受け不本意ながら政界を引退した異能の政治家が、2004年夏の参議院議員選挙の直前に、小泉総理のことを「国政全体を俯瞰する全体的な、歴史的な発想力が欠落している」と批判を加える書き出しで始まる強烈な本である。

 「政治とは何か」、「政治家はどうあるべきか」ということが、自らの体験を踏まえ、切々と語られていた。総理大臣の「一念」は「一種の狂気」だとし、いったんやろうと決心して火の玉のようになれば大方のことはやれる、だからこそ首相たるものは「権力の魔性を自戒」しなければならないとし、政治家が独善的な道に走らないための戒めを記していた。

 国内政治、国際政治の様々な局面で出会った人物を観察し、評価しながら、「人生における巡り会いは多々あるが、何時までも親しく往来する仲間の数は限られ、著者の場合はせいぜい60から70人であり、その間を行き来しているうちに人生は怱忙として暮れてゆく」、と述べている。波瀾万丈の長い年月を過ごしてきた人物の意外に冷静な記述に、目のうろこが落ちる思いがした。

 国の最高権力者であっただけに、トップシークレットに近いと思われる記述も散見された。特に以下の指摘の事実関係は、際物であり、今後の歴史家の研究テーマとなりうるようにも思われた。

 ・キッシンジャーとハワイで会った時に、彼は「ロッキード事件は間違いだった」と密かに私に言ったことがある。キッシンジャーは事件の真相についてかなり知っていた様子だ。
 ・1970年に、実は日本の核武装の可能性について研究させたことがある。結論は当時の金で2,000億円、5年以内で出来る、というものだった。ただし、日本には核実験場がなかった。

 東畑精一さんという今では懐かしい名前が紹介され、その東畑先生が、「日本の指導者は政策がなかったり、曖昧な時は『改革』『改革』と言って騒ぐ」と言っておられたとの述懐には、思わず納得させられた。負けると判っていた藤山愛一郎さんを総裁選で押したとき、「大義名分があり、主義主張が明確であれば、負け戦に荷担することも政治にはある」との真情の吐露も、心に迫るものがある。イタリアのファンファーニ首相から聞いたとの法王の言葉、「二つの道があるときは厳しい方の道を選びなさい」の紹介などは、子供にも伝えたい人生哲学そのものだ。そう言えば、聖書にも「狭き門より入れ」、という言葉もある。中国、韓国、日本の三カ国が定期首脳会議を行って東アジア経済協力機構を作るべし、との提言は、全くその通りだと思う。

 さて、この中曽根元首相は、総選挙を経た今日の時点における今後の政界再編について、「自民、民主の保守党が競い合い、相手のことばかりが目について保守党本来のあり方が薄れている。今後は、憲法や教育という国の基本問題、保守党本来の考え方や政治運営に取り組み、自民も民主も一つ深呼吸して再出発してほしい。」と語っている。民主党の本質を保守党と位置付けるところに元首相の慧眼があるようにも思えるが、一方で、日本の少子高齢化が急速に進行し、人口減少局面の中で、しかも現在の大きな財政制約という環境の中で、我が国の今後の行方を考える時に、中長期的観点から見て、社会保障や公共事業の在り方について政党間で大きな選択肢の差異は生じ得ないように思える。その意味では、今後は、憲法、宗教、文化、言語、伝統、教育といった我が国の本質に迫る問題がよりクローズアップされることになるように思われる。

 こうした政策テーマに合わせ、政治の在り方も成熟した民主主義国家にふさわしいものに昇華していくことを望みたい。私自身もそれを担えるような研鑽を積んでいかなくてはならない。

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