むたい俊介
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長野2区 自民党

【メッセージ】
「ガソリン価格と税制」
〜英国でガソリンが高い理由〜

 昨今のガソリン価格高騰で日本国民は悲鳴をあげているが、私が英国滞在中、英国ではその値段が約1ポンド(日本円換算で230円。ポンド高のピーク時で換算すると250円)にもなり、日本の比ではなかった。

 何でこんなに高いのかと日頃素朴な疑問を感じていた。税収が道路財源に充てられているのかと思うとそうでもない。一般財源なのだ。英国は「予算原則」の母国でもあり、「ノンアフェクタシオン」の原則が貫徹しているのかなあ、などとも考えまたが、そうは言っても英国の道路は狭隘で、しょっちゅう渋滞が起き、ロンドンなどは都心に車が入ってこないように都心に進入する車に課徴金をかけて交通量を制限しようとしているくらいだ。そこで少し頑張って調べてみた。

 実際にその税率を見ると、一リットル当たり0.5035ポンド(ガソリンとディーゼル)という数字が目に入る。バイオディーゼルとバイオエタノールは軽減税率が適用になりリッター0.3035ポンド。英国では、価格に税率をかける従価税ではなく、燃料の量で税額が決まる従量税の制度になっている。この燃料税込みの燃料価格に更に付加価値税率の17.5%がかかり、最終的にはリッター1ポンドというガソリン価格が誕生することになる。このうち税金はリッター65.24ペンス、つまりガソリン価格の65%以上を占めることになる。

 英国は何故こんなに税が高くなっているのか。日本の感覚で考えると、前述の通り英国は道路が狭隘で整備が遅れているので、そのための税源を確保する必要があるのだろうな、という素朴な感じなのだが、どうも事情が異なるようだ。実は地球の反対側では税の理屈が正反対なのだ。

 実は英国のガソリン税を大きく引き上げてきた原因となった制度があった。Fuel Price Escalator (FPE)という制度だ。「ガソリン価格引き上げ制度」とでも呼ぶのであろうか。もう引き上げが前提になっているようなあからさまな名前である。実はこれ、ガソリン税を自動的に引き上げる制度だったのだ。1993年に保守党政権によって導入されたこの制度は、インフレ率に3%上乗せした価格をガソリン税として設定した。この3%の率はその後5%上乗せとされた。1997年に労働党政権になってからは更に6%の上乗せ。これが1999年まで続いた。

 ガソリン税が原因となったガソリン価格引き上げに怒ったトラック運転手は、2000年に大規模な抗議運動を起こした。ガソリン価格が0.81ポンドに上がったからだ。ドーバートンネルの英国側の入り口を塞いだり、石油精製所や石油貯蔵所をピケにより封鎖したり、と英国経済に大混乱を起こした。

 その抗議運動が結果として功を奏し、2000年11月になってFPEは廃止されたが、制度廃止の時点で、英国は欧州の中でも最も燃料価格の高い国の1つになっていた。FPEが始まった1993年時点では、英国の燃料価格は欧州の中でも最も安価な国のひとつだった。FPEは10年もたたないうちにこうした引き上げを実現した強力な制度だったのだ。

 さて、この制度の考え方だが、実質的な環境税である。ガソリン価格を高くすることにより、ガソリン使用を控えさせ、大気汚染を抑制し、新たな道路整備の必要性も無くするというものだ。道路の整備に必要だから道路目的財源としてガソリン税を課税する日本とは全く逆の発想である。

 さて、最近の更なる原油価格の高騰と2007年10月のガソリン税の2ペンス引き上げの結果、2008年1月の時点で遂にガソリン価格は1ポンドを超えていた。大規模抗議行動のあった2000年よりも大幅に高い価格になっていた。トラック運転手の団体は更なる抗議行動の動きも見せた。

 しかし、一方でFPEの廃止で2010年までに燃料消費が11%増加し炭素排出量が400万トン増加するとの予測も出されたり、石油の価格を巡る議論は英国内でも立場により様々な考え方がある。

 以上、日英のガソリン税の性格の違いを少し垣間見ただけですが、両国の間の考え方の差の大きさに愕然とした。

 ところで、英国では脱石油を目指す考え方から、政府は2008年の新年早々に従来凍結していた原子力発電所の増設に踏み切る方向に大きく舵を切った。地球温暖化対策を進めながら安定したエネルギー供給のためには原発凍結を解除する必要があるとの立場だ。これには与党労働党と保守党の意見が一致している。国際的な影響のある大きな判断だ。安全性や核廃棄物の処理問題など、懸念の声も強いが、今後の議論の行方が注目される。

 日本的な感覚で見た場合、ガソリン価格のあり方の問題、原発問題に臨む対応について、英国で与野党の考え方に大きな差が無いのは、不思議ではあるが、ある意味で新鮮な驚きも感じる。私の目には、エネルギー問題のような国の行く末に関わる大きな問題は、責任政党たるものは敢えて国民受けする対応を取らず、政争の具にはしない、との暗黙の了解があるようにも思えてくる。

 日本のように、道路目的税の税率延長に係る租税特別措置の期限切れに絡み、国民の人気取りとしか見受けられない対応を取る日本の某政党の姿を見る機会があったが、日英の政治の成熟度の違いをまざまざと感じてしまう。

 私の認識がややうがっているのかもしれないが、そのような感想を覚えた。あるいは、日本の某政党も、実は理念が高く、ガソリン税を環境税に改変し税率を上げることを念頭において行動しているのだとすると、実は立派な考え方に立っているのかもしれないが、少なくとも体系的な議論の形跡は見受けられなかった。

 なお、日本の最大手石油業界に勤務している私の友人から、暫定税率問題は、システム変更、4月1日の高い税率の在庫、資金繰り、仮需に伴う配送などの点で、流通過程に相当の混乱が生じるとの懸念の意見も寄せられた。 「ガソリン価格問題を政争の具にしないでいただきたい」というのが本音のようであった。

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