むたい俊介
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長野2区 自民党

【メッセージ】
「311に学ぶ危機管理の政治思想」
〜リニア新幹線のルート選定を例に〜

 東日本大震災の前と後とで、日本の雰囲気が一変してしまった感がある。何かしら空しくなり、妙に達観した気持ちになり、そして人にやさしい気持ちになっている。電車の中では、最近あまり見かけなくなった若者がお年寄りに席を譲る光景が頻繁に見受けられるようにもなっている。

 寄付を集めると思いもよらぬ気前の良さで義援金が集まる。街頭や店頭の義援金箱に何度も何度も寄付をする人は少なくない。何かをしてあげたいという気持ちが多くの国民の間に高まっている。こんな雰囲気を感じることはそうはない。

 このような社会的雰囲気の中にいると、多くの宗教や哲学が、大災害や戦争という人類の受難の際に人間の在り方を問い詰める中で発生するものであることがよく分かるような気がする。

 そして大災害という与件の中で、自分自身がこの大災害という状況にどう行動するか。そのことが問われている。公務員や災害救援従事者として動くことはもとより、ボランティア、義援金を贈る立場、祈る立場、慰める立場、被災者を受け入れる立場、など様々な立場でありとあらゆる支援が可能である。

 支援の輪に我々自身が加わり、日本という国土が傷ついた体験を自らの実体験に組み込みとともに、これからの国づくりの方向性についても哲学的・理念的な立ち位置を明確にしなければならない。

 高度成長以来の効率性一辺倒の仕組みが、実は大きな脆弱性という負荷を国土構造に組み込んできたのではないか、という点である。一言で言うと、東京一極集中という一見効率的な仕組みがもたらした国土構造の脆弱性の助長というパラドックスである。一極集中は東京一極集中だけではない。部品生産の一極化、システムの一極管理も同様である。国土構造を累卵の危うきに置いてしまった。

 原発が、首都圏の経済活動を支えるために、首都圏域以外の地域に多数作られた。原発によって東京圏の活動は成り立っている。首都で分刻みの忙しさの中ではあるが、新幹線を使い、冷暖房の効いた高層ビルで働き、高収入を得ている人々が原発反対を叫んでもリアリティーはない。原発に頼るエネルギー活用の現実から脱却するためには、国土構造を見直さなくてはならない。

 その方向性とは、一定程度地域の自己完結性のある仕組みを国土構造として位置付けていくことである。そして、そのアメーバーの様な機能分散を、高速交通網、インターネットで縦横無尽に結ぶ。そうした地方分権社会とネットワーク社会の組み合わせにより、どこかで大きな災害が起きたとしても、国家として致命的な痛手を受けることが無く、国家として生き残れる、被災地域を直ぐにカバーできる隙間の無い国土構造を作ることが出来る。

 具体例をあげよう。リニア中央新幹線である。この高速交通網は、東海道新幹線のバイパスとして東京、大阪間をほぼ直通で結ぶという構想である。ルートとして南アルプスを直通貫通するCルートが、諏訪に迂回するBルートよりも経済効率性に優れると謂われている。「経済効率性」でいうとそうかもしれない。しかし、東日本大震災を経て、改めて日本列島が巨大自然災害の上に乗っかっていることが分かった。その際に、東海地震の震源域に近い南アルプスの真ん中を貫く長大トンネルが本当に安全にリニア新幹線を通していけるか、という点をきちんと詰めなければなない。

 加えて、直通ルートにより、長野県の内陸部は発展の可能性から取り残される可能性が大きくなり、国土構造上も問題である(注)。

 我々は、311の前と後とで、国土構造の在り方という観点からも、効率性を超えた理念に立ち、国土の均衡ある発展、各地域が相互にネットワークで支え合えるような制度、インフラの在り方を考えていかなければならない。

 想定外の事態が起きた際に、よりダメージの少ない選択肢を選ぶことのできる政治思想こそ、311に学ぶ国土構造の危機管理の政治思想である。

(注)この点については既発行の以下のメルマガで解説を行った。
https://www.mutai-shunsuke.jp/i/policy103.html

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